籠もよ み籠持ち 掘串もよ み掘串持ち この丘に 菜摘ます児 家聞かな 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ座せ われこそは 告らめ 家をも名をも
標目
泊瀬朝倉宮御宇天皇代〔大泊瀬稚武天皇〕
語釈
- 泊瀬朝倉宮:現在の奈良県桜井市黒崎、または同市岩坂にあったと伝わる雄略天皇の皇居。
- 大泊瀬稚武天皇:雄略天皇。5世紀後半の天皇。
題詞
天皇御製歌
語釈
- おほみうた【御製歌】:天皇がお作りになった歌。
本文
漢文
篭毛與 美籠母乳 布久思毛與 美夫君志持 此岳尒 菜採須兒 家吉閑 名告沙根 虚見津 山跡乃國者 押奈戸手 吾許曽居 師吉名倍手 吾己曽座我許曽者 告目 家呼毛名雄母
読み下し文
籠もよ み籠持ち 掘串もよ み掘串持ち この丘に 菜摘ます児 家聞かな 名告らさね そらみつ 大和の国は おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ座せ われこそは 告らめ 家をも名をも
語釈
- こ【籠】:竹などで編んだ籠。
- み【美】:美称、また、語調を整える。
- ふくし【掘串】:竹や木の先をへら状にとがらせた、土を掘る道具。
- こ【児】:人を親しんで呼ぶ語。男女ともに用いる。
- そらみつ:〘枕詞〙「大和」にかかる。
- おしなべて:あまねく。すべて。一様に。
- しきなぶ【敷き並ぶ】:くまなく支配する。広く領有する。
現代語訳
その籠、かわいい籠を持っているね。その掘串も、おしゃれな掘串だね。この丘で菜を摘んでいるお嬢さんよ、あなたの家はどこなのか聞きたいな。名前を教えてくれないかな。そらみつ大和の国は、すべて私のものなんだよ。私こそがこの国を統治しているんだよ。こちらから教えましょう、家も名前も。
作者
雄略天皇
基本情報
巻 | 第1巻 |
---|---|
歌番号 | 第1番歌 |
部立 | 雑歌 |
歌体 | 長歌 |
標目 | 泊瀬朝倉宮御宇天皇代〔大泊瀬稚武天皇〕 |
題詞 | 天皇御製歌 |
本文(漢文) | 篭毛與美籠母乳布久思毛與美夫君志持此岳尒菜採須兒家吉閑名告沙根虚見津山跡乃國者押奈戸手吾許曽居師吉名倍手吾己曽座我許曽者告目家呼毛名雄母 |
本文(書き下し文) | 籠もよみ籠持ち掘串もよみ掘串持ちこの丘に菜摘ます児家聞かな名告らさねそらみつ大和の国はおしなべてわれこそ居れしきなべてわれこそ座せわれこそは告らめ家をも名をも |
本文(現代語訳) | その籠、かわいい籠を持っているね。その掘串も、おしゃれな掘串だね。この丘で菜を摘んでいるお嬢さんよ、あなたの家はどこなのか聞きたいな。名前を教えてくれないかな。そらみつ大和の国は、すべて私のものなんだよ。私こそがこの国を統治しているんだよ。こちらから教えましょう、家も名前も。 |
作者 | 雄略天皇 |